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ません。しかし、これは言うは易しですが、実行するうえではいろいろな困難が存在します。国家政策目標を形作るうえで、我々は道徳的に正しく、今すぐ実現可能な目標を作り上げる必要があります。
この30年間、フィリピン政府は妊産婦、乳幼児に対する健康も含むプライマリーヘルスケアを重視してきました。家族計画もこのプライマリーヘルスケア・サービスの中に含まれております。男性と女性の間でヘルス・ケア、教育の機会に格差があってはならないと考えております。
もう1つ重要な点は、男性の参画の重要性です。特に育児に対する男性の参画が重要です。これはフィリピンにおいては特に大切です。未だにフィリピンにはいわゆるマッチョ(筋肉質・男性中心)な文化があり、育児に対する男性の参画は非常に重要です。私自身、マッチョと言われておりますけれども、しかしながら、これは変えていかなければならないと思っております。そして、ミセス・ラモスに対して、私は、つねに、協力を惜しんでおりません。
フィリピンにおける人口・開発プログラムは、言うまでもなく人権の尊重を基礎にしております。この国に生まれたすべての子供たちの人権を認めております。私も、家族計画の方法としての中絶は認めませんし、中絶を促進するつもりもありません。
もちろん、我が国において人口プログラムを実施していくうえで問題点があるということは認識しております。特に、信仰に関することです。一人一人、信仰や価値は異なるかもしれません。しかしながら、その一方で、このフィリピンという社会の一員でもあるのです。我々はそれぞれの教会で、信仰活動をしています。政治的なそして行政的な面における信仰上の寛容性も大切であり、私たちはこれを尊重しております。しかしながら、公的な生活は共通の利益にかなったものでなければならないと考えています。
次に食料安全保障の問題をお話ししたいと思います。この開発の現実というものを考えてみますと、持続可能性という概念をそれぞれの構成要素に分解し、それぞれに検討しなくてはなりません。開発過程のいかなる部分において我々は影響力を行使できるのか、ということを考えなくてはなりません。
その構成要素の1つが食料安全保障です。2週間前になりますが地域での検討から始まって長い準備過程を経てフィリピンの食料安全保障サミットを開催いたしました。そこで合意されたのは、「すべての男性、女性、子供は、栄養失調と飢餓から解放される、奪われることない権利を持っている。これによって物理的、肉体的そして精神的な健全性というものを発達、維持することを確保しなくてはならない」ということです。この原則は、フィリピンのみならず他のすべての国々にあてはまるものであると考えております。食料安全保障というのはすべての人たちのものであります。
いつでも食料が安全に確実に確保されることになりましたら、価格も安定し、生産

 

 

 

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